2012年7月20日金曜日

SAPHO 症候群

胸痛を主訴に来院される患者さんは多い。胸部XP・CTや心電図で心臓・肺由来の胸痛ではないと診断された後、どうしたらよいかと戸惑っている患者さんもいる。そうなると食道、上部消化管、頸部・頭部の疾患がないか見極める必要があろうが、忘れてならないのは筋骨格系疾患である。大人の胸痛の原因の1015%を占める。胸壁に圧痛があることで虚血性心疾患や肺塞栓症は除外できないということだが、筋骨格性由来の疼痛である可能性は高まる。
 筋骨格系疾患で胸痛の原因として多いのが、肋軟骨炎、下部肋骨疼痛症候群(中年女性の肋骨縁上の圧痛、)がある。その他、TIetze症候群等、肋骨、胸骨椎体に痛みを引き起こす症候群もある。

リウマチ関連の筋骨格系の痛みの原因として、線維筋痛症、リウマチ、硬直性脊椎炎、乾癬性脊椎炎等が挙がる。

 頻度は多くないが、掌蹠膿疱症を持つ患者が前胸部痛を訴えたとき、それに関連する骨関節炎を念頭に置く必要がある。日本やヨーロッパからの報告が多く、SAPHO 症候群と呼ばれている。Synovitis(滑膜炎), Acne(にきび), pustulosis(膿疱), Hyperostosis(骨化症), Osteomyelitis(骨髄炎)の頭文字をとった呼び名である。これはリウマチ反応陰性の脊椎炎に似ているということだ。

前胸部に起こりやすく、胸骨や鎖骨の圧痛、腫脹、疼痛を起こす。著しい例ではXPで骨の増大が確認できる。ときに顎骨や長幹骨、椎体にも及ぶことがある。

病理は無菌性骨髄炎に類似している。病因は不明。経過としては、一部は自然寛解するが、大部分は寛解・再発を慢性に繰り返すようだ。診断が付かず、慢性疼痛性障害として経過観察されているケースもある。

治療としてはNSAID,コルヒチン、ステロイド、sulfasalazine, メトトリキセート、レチノイド等が挙がっている。抗菌薬の効果は議論が分かれている。最近では、ビフォスフォネートやinfiximabなどが試みられている(ランダム化研究ではない)。

 扁桃腺炎がある場合には、扁桃摘出を勧める医師もいる。(山本和利)