札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2011年11月29日火曜日

Community as Partner

11月29日、月寒ファミリークリニックの寺田豊先生の講義を拝聴した。講義のタイトルは「地域診断とは:community as partner」である。

ある地域に赴任して地域医療を始める時、「あなたは何から始めますか?」という問いかけから授業は始まった。

厚岸町の地域診断の事例を紹介。人口11,410人、世帯数4,474世帯。産業は漁業と酪農。
デルファイ法:専門家が独自に意見を出し合い、それを相互に参照し再び意見を出し合うという作業を繰り返す、でアンケート調査をした。
健康課題の上位ランクは、1)高齢者にかかりつけ医が不在、2)少年期の生活リズムの乱れ、・・・。高齢者独居や子供のおやつの「箱買い」が問題として挙がった。

学生時代に実習に行った揖斐村。そこで出会った言葉、「地域診断してはじめて地域医療と言える。」
を紹介。

地域視診:自分の足で(community on foot)。地区視診の16項目
1)家屋と街並み、2)広場や空き地の様子、3)境界、4)集う人々と場所、5)交通事情と公共交通機構、6)社会サービス機構、7)医療施設、8)店舗、9)町を歩く人々と動物、10)地区の活気と住民自治、11)地域性、12)信仰と宗教、13)人々の健康状態、14)政治に関すること、15)メディアと出版物、16)その他
について、学生各自に自分が住んでいる地区について書いてもらった。その間に天売島の事例を紹介。Windshield survey(車窓から評価する方法)もある。

Community as Partner Model:地域をパートナーとして位置づけ、共に取り組んでいくことを強調している(E.T. Anderson, 2004)。車輪の中心に住民がいる。8つのサブシステムを設ける。1)物理的環境、2)保健・医療・福祉(ホームレス健診)、3)経済(商店街)、4)安全と交通(SOSネットワーク)、5)政治と行政、6)コミュニケーション(広報誌)、7)教育、8)リクレーション(遊び場)。

Photovoice(Wang, et.al,2004):写真にナラティブを付ける。ここで有名なphotovoice「不満の探求」(スクールバスの窓に残る銃痕)を紹介。

Assets Mapping(McKnight,1993):強みを探して地域資源を地図化する。元気がでてくる。地元学とも言う。地域にはいいものがあるはずだ(participatory rural appraisal )。

Social mapping:社会的、物理的な空間を意識する。
地域づくりのための12の再生の法則(後藤哲也:黒川温泉で有名)を紹介。
「地図は現地ではない」(コージブスキー、1879-1950)

絶えず新しい課題にチャレンジしている寺田先生である。地域医療の奥深さを知り、感銘を受けたという学生からの意見が少なからずあった。(山本和利)